昨日のNHKクローズアップ現代+。感染症の専門家が世田谷区長の肝煎り政策に「効果なし」
世田谷区議会議員、桃野芳文です。
昨日のNHK「クローズアップ現代+」で新型コロナ対策としての自治体のPCR検査が取り上げられていました。
番組では世田谷区長の”肝煎り政策”、区長曰くの「社会的検査」についても取り上げられていました。この社会的検査なるものは、区内の高齢者施設で働く方、施設利用者を対象に押し並べてPCR検査をしていくというもの。と言ってももちろん検査は希望した方のみ。そして区長は「定期検査」とは言っているものの、数ヶ月かけても区内施設の一巡すら終わらないという程度の頻度で行われているものです。多くの場合は、一度きりの検査ですから「定期検査」というのは看板に偽り有りだとも思います。
以下は関連ブログ。
【区長の言う”社会的検査”は施策の中身だけでなく、区長の「やり方」にも大きな問題あり】(2020.10.01 桃野ブログ)
【区長の「誰でも〜PCR」が激変した「社会的検査」は10日間で268人検査し陽性者2人】(2020.10.14 桃野ブログ)
【世田谷区長の肝煎りだからやめられない?今「社会的検査なるもの」を続けている場合なのか】(2021.01.08 桃野ブログ)
この「社会的検査」5億円近い予算が投じられているのですが、桃野はこれまで対案も出しこの施策に反対。どう考えてもこの施策は医学的におかしいと感じますし、どう考えても区長のパフォーマンス以外に、こんなことをやる理由が見つからないからです。
昨日のクローズアップ現代でも、出演されていた高山義浩さん (沖縄県立中部病院 感染症内科副部長)は、まさに桃野が議会で主張してきたことと同じことをおっしゃっていました。
以下、番組内での武田真一キャスターと高山義浩さんとのやりとりです(一部抜粋書き起こし)。
■高山さん
高齢者施設というのは集団感染が起こりやすいところですので、とりわけ対策を徹底すべき場所です。その意味で世田谷区はうまく狙いを定めているなと思います。ただ、世田谷区では10月から検査を始めたということなんですが、まだ施設全体を一巡できていないということで、この頻度では感染を封じ込めていくのは難しいのでは無いかと思います。もしPCR検査を用いて封じ込めまで狙っていくのであれば、1週間に一度は検査を行なって行きたいところですね。
○武田キャスター
1週間に1度は必要。
■高山さん
はい。
用意したグラフをご覧いただきたいのですけど。
PCR検査が新型コロナに感染した人をどれくらいの頻度で見つけることができるかを表したものです。
時間とともに感度は変わっていくんですけど、最も感度が高い時でも8割ぐらいしか無いんですね。つまり2割は見逃す可能性があるということです。これが検査の限界です。ですから検査結果が陰性であっても感染対策を疎かにすることはできません。
そしてもう一つ注目していただきたいのは、赤い帯で出している部分です。
赤色が濃いほどに周囲にうつしやすい期間ということになるんですけども、ご覧の通り濃いところが発症前にありますよね。この期間が特に感染力が強いというのが新型コロナの特徴です。もし症状があるのであれば「受診してください」とお勧めしていくことで気づくことができるんですけど、無症状の方々というのは自分が感染していることに気づかないまま周囲に広げて行きます。ここをターゲットに見つけて行きたいのであれば月に1回程度であれば効果は上がりません。やはり1週間に一度は検査をしておきたいところです。
○武田キャスター
なるほど。しかし1週間に一度ってなかなか難しいんじゃ無いかと思うんですけどね。
▲宮田裕章さん (慶應義塾大学 医学部教授)
例えば神奈川県では2週間に一度の頻度で高齢者施設に対するPCRを行なったりもしていますね。
○武田キャスター
ここ、どうなんでしょうか。高山さん。
■高山さん
もし検査体制に限りがあって難しいということであれば、漫然と月に一回(検査を)やるよりは、より対象集団を絞りこんでいった方が良いかもしれません。
(書き起こし以上)
世田谷区長は、無症状の感染者を見つけ出して隔離するために検査をすると言い続けていますが、その頻度が数ヶ月に一度の検査では意味はありません。それも施設丸ごとではなく希望者のみという状況。そのような検査に区民の大切なお金を5億円近く投じているのです。
桃野はこれまでも、高齢者施設に対して重点的に感染防止のための施策を投じることには賛成してきました。もしも検査をするなら、対象を絞って繰り返し検査しないとダメだとも行ってきました。まさに高山さんの指摘と同じです。議会で繰り返し働きかけても全く聞く耳を持たなかった世田谷区長。昨日のクローズアップ現代をどう見たでしょうか。
高山さんは「クローズアップ現代で伝えきれなかったこと」もまとめて発信して下さっています。こちらも必見。
昨夜のクローズアップ現代で伝えきれなかったことも含め、私なりの考え方を整理しました。https://t.co/hOnfm9xjhd
— 高山義浩 (@hiro_icd) February 18, 2021
以下、桃野が重要だと思うところを上記の記事より抜き出しました。
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スクリーニング検査とは、流行が発生していることが明らかな集団に対してPCR検査を広く実施して、潜在する感染者を特定することを目的とします。
流行を抑え込むことが目的ですから、見逃さないよう全員検査が原則となります。言うまでもありませんが、希望者だけに実施しても封じ込めることはできません。
沖縄県では、集団感染が疑われる高齢者施設に対して、当該フロアまたは施設全体の職員と入居者全員にPCR検査を実施しています。感染直後など偽陰性のリスクがあるため、陽性者を認めなくなるまで1週間おきに実施して封じ込めています。
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第3類型(感染性を失った既感染者)をほとんど発見することなく、効率的に集団検査を実施する方法が2つあります。
ひとつは、特定の集団に対して1週間おきにスクリーニング検査を実施すること。これなら、第3類型になる前に多くが発見されるので、その後の検査対象から外すことが可能となります。なお、このインターバルを1ヶ月おきにしてはいけません。封じ込める目的が達成されないばかりか、第3類型がどんどん紛れ込んでしまいます。
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新型コロナのPCR検査とは、シロクロつけられない不完全な検査です。陽性だからといって隔離すべきとは限らず、陰性だからといって感染していないとは言えません。とくに、PCR検査で陰性だったとしても、多少の症状があっても働き続けられるとか、感染対策を緩められると誤解しないことが大切です。
また、集団検査を呼びかけたとしても、日本は民主国家ですし、検査を強制するようなことはできません。大規模検査を構想する人は、まるで全数検査ができるかのような幻想にとらわれないことが必要です。いわゆる「意識の高い人」しか検査を受けてくれないのが現実であり、中国のようにPCR検査だけで流行を封じることはできません。
■こちらは区長が出来もしないのに「誰でも、いつでも、何度でもPCR検査」とメディアでぶちあげて、役所や議会を大混乱に陥れたことに対しての質疑。
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