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世田谷区の桃太郎 桃野芳文Webサイトです
2020-08-08

解説。世田谷区長の目指すという「誰でも、いつでも、何度でもPCR」をすべきでない理由。

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世田谷区議会議員、桃野芳文です。

今日のブログも、世田谷区長が喧伝する「誰でも、いつでも、何度でもPCR検査ができるようにします。費用は自己負担無しです」について。

先ず改めて桃野がこれまでブログ等で述べていることの確認ですが、医師が検査が必要と判断した方、感染を疑われる症状がある方、検査陽性者の濃厚接触者に対して、遍く検査ができるよう検査体制を充実することは必要で、それはどんどん進めるべきです。しかし「誰でも、いつでも、何度でも、PCR検査をできるようにします。費用は自己負担無しです」を目指すという世田谷区長の施策は間違い。

桃野は「区長が喧伝している内容は区の施策としてやってはいけないことだ」と区議会でも述べ、ブログやSNSでもその旨をお伝えしています。その桃野の意見に対する批判も引き続き寄せられていますが、そうした方にはその理由、意味を丁寧に説明したいと思っています。

例えば、こんな質問がありました。先ず、桃野の過去ブログから。

改めて。桃野は賛同できません。区長が喧伝する「誰でも、いつでも、何度でも」PCR検査】(2020.08.02 桃野ブログ)

桃野は、今はPCR検査体制の拡充を図ることと並行しながら、そのキャパシティを見て、感染の可能性のある人、その濃厚接触者、感染リスクの高い人を検査対象とすべきとの考えです。もしもこの先、コロナが収束し、医療資源にも大きな余裕が生まれているという局面(病院も保健所ものんびりした状態)に入れば「無症状、特に感染の心当たり無し、でも念のために検査を受けたい」という人が検査を受けるというのも良いでしょう。しかしその場合も、自身の金銭的負担で検査を受けるというのが筋だと考えます。

上記ブログでこのように述べたところ、Facebookを通じて、以下の質問が寄せられました。

感染拡大の要因の一つに、感染しているが無症状の人が一定数おり、その人が普通の生活の営み=仕事に出たり外出外食したりと動き回る事により、他者に感染するという事実がありますが、桃野さんのご意見では、この無症状者からの感染は防げませんので、感染拡大を抑え込み解決することはできないように思うのですが、この点はどのようにお考えでしょうか?

それに対する桃野の返答。Facebookのコメント欄ですので、手短に以下を返信。

ランダムに調査するのでは無く、検査陽性者に対するトレースの中から見つかる確率の方がはるかに高いです。

すると同じ方から、更に以下のコメント。

その根拠をお示し頂けますか?

桃野、更に返信。繰り返しになりますがFacebookのコメント欄ですので、手短な返信になっています。

そもそも感染者率(人口全体に占める感染者の数)が少ないからです。

同じ方から、更に以下のコメント。

なるほど、お示し頂けるほどの根拠やデータはおありでないという事ですね。さすが、イソジンが市場から消え高額転売を煽ることになった原因を作った某知事の政党だけはあります。各医療現場、特に手術の現場で大変困った事態になっているようです。「正しい知識と根拠を持って物事を考え先読みする力がないということは、政治家としては罪に値する」国民はイソジン騒動でさらにその実感を強く持っています。

桃野は政党には属していない無所属の区議会議員です。念のため。それはさておき、Facebookのコメント欄で短い文章で説明するとなかなか本意が伝わらないものだなと感じたので、ここでもう一度、紙幅を割いてそれについて説明したいと思います。

先ず以下の数字を確認。

世田谷区の人口は約900,000人(90万人)。世田谷区のサイトで公表されている昨日(2020.08.07現在)の検査陽性者数は累計で1,268人です。検査陽性者は全て世田谷区民とは限りませんが、それは誤差としてここでは無視します。

(検査陽性者数/世田谷区の人口)=(1,268/900,000)=0.14%

世田谷区において人口に対する検査陽性者の割合は0.14%です。

一方で、医師が検査が必要と判断した場合や、検査陽性者の濃厚接触者に対しては検査をするわけですが、検査を受けて陽性の結果が出る場合については以下の数字となります。

※注1)検査陽性者数と区民の検査数は世田谷区のサイトで公表されています。

※注2)検査陽性数を取りまとめている東京都によると「検査から結果が出るまでは3日程度要する。なお、この検査結果と本日の報告数が一致するものではない。(陰性確認を含む)」とのこと。

世田谷区が公表している8月7日の検査陽性者は48人。検査から結果まで3日とすると、8月4日の検査数267件か8月5日の検査数236件に対する数字だと類推されます。検査は全て世田谷区内で行われたとは限りませんが、それは誤差としてここでは無視します。

(陽性者/検査を受けた人)=48/267=0.18 つまり18%

(陽性者/検査を受けた人)=48/236=0.20 つまり20%

この数字は日々の変動が大きいので、もう少し正確に状況を把握するためには東京都が公表している陽性率(*)を見ます。東京都が公表している最新(8月6日時点)の陽性率は7.2%です。

*陽性率:陽性判明数(PCR・抗原)の移動平均/検査人数(=陽性判明数(PCR・抗原)+陰性判明数(PCR・抗原))の移動平均

東京都の「新型コロナウイルス感染症対策サイト」より。

「誰でも、いつでも、何度でも」検査を受けるというのは、街を歩いている人にランダムに声をかけて検査を受けてもらう状況に近いわけですが、その際に検査で陽性者が見つかる確率と、症状があったり、陽性者の濃厚接触者であったりと医師が検査の必要性を認めた方に検査を行った場合に陽性者が見つかる確率とを比べれば、どちらを検査の対象とすべきかは明らかでしょう。仮に「新型コロナウイルスに感染しているが無症状で周囲に感染を拡大させている方」がいるとして、その方を見つけたいということであっても、ランダム検査からではなく、検査陽性者の濃厚接触者の中から見つかる可能性の方が遥かに高いというのも明らかです。

更に、保健所も医療機関もコロナ禍で疲弊しています。その中で、大多数が陰性であることがわかっている人を検査するために、その貴重な医療資源を割くのは間違い。更に自己負担ゼロなどということになれば「私も念のために検査を」という人が増え、検査数が膨らむことは間違いありません。

そして「医師が検査した方がいい」と判断して検査した場合ですら、陽性となる人は(直近の世田谷区の検査では)2割程度。東京全体で移動平均をとった場合、8月6日の数値で陽性率は7%程度だと理解しておくことも大切でしょう。

加えて、昨日(8/7)の東京新聞の記事も大変わかりやすかったのでご紹介します。東京新聞の記事からこれまで桃野が受けていた印象は「東京新聞は、世田谷区長の”誰でも、いつでも、何度でもPCR検査”に賛成なのかな」だったので、昨日の記事を読んでほっとしました。

【東京新聞(2020.08.07)「日々論々」鈴木穣解説委員】より抜粋、要約。

・新型コロナウイルス感染症対策でPCR検査の実態について理解が広がっていない。

・医師が必要と判断した人や症状のある人が検査を受けられない事態が起こらないよう検査体制の強化や、感染不安を抱える人が相談できる窓口の充実は不可欠。

・症状のない人も含め広く国民を、又は希望者全員を検査すべきとの意見もあるが、こうした感染している確率の低い人を対象にするには不向きな検査だ。症状があり感染が疑われる人や感染者の周囲にいる濃厚接触者など感染確率が高い人を対象にした活用に向いている。

・検査能力は、感染している人を陽性と判定する能力(感度)と、感染していない人を陰性と判定する能力(特異度)で表す。PCR検査は感度70%程度、特異度99%台と言われる。

・つまり感染者の約3割は見逃され陰性(偽陰性)となる。特異度が99.9%とすると感染していない人の0.1%は陽性(偽陽性)となる。

・感染者100人を含む10,000人を検査すると感染者のうち30人は偽陰性。陰性だからと日常生活を送れば知らないうちに感染を広げる懸念がある。

・感染していない残りの9,900人のうち9.9人は偽陽性となり、本来不要な入院や宿泊施設での待機などの措置が取られる。医療体制が逼迫すれば治療が必要な重症者に十分な医療が提供できなくなる恐れがある。

・偽陽性の問題は検査数が多くなるほど無視できなくなる。例えば100万人なら千人が偽陽性となる。陰性証明を求める声もあるが以上の理由から検査結果は必ずしも証明にならない。

・この検査はその時点での感染の有無を調べる手法。仮に感染状況の把握を目的に感染確率の低い人も含めて広く検査するとなると。大規模にしかも同じ人への頻繁な検査が必要になる。偽陽性の人も増える。

・検査をしないと対策ができないわけではない。隔離は重要だが、感染を疑われる人には検査の有無に関係なく隔離が実施されている。

・財源や医療資源は限られている。対策の効果を上げるために、それを検査に使うのか重症者を救う医療体制強化に使うのか見極めが必要。

・感染症対策の目標は重症者や死亡者を極力減らすことだ。

(抜粋・要約以上)

昨日のBS-TBS「報道1930」にも世田谷区長が出演していました。これまで「誰でも、いつでも、何度でもPCR検査」を目指すと言っていた世田谷区長が、これを言わなくなっていました。

ちなみに、桃野が過去ブログで引用したネットニュース、「BUSINESS INSIDER JAPAN(聞き手・構成、浜田敬子)」は、「編集部より:初出時、世田谷区の保育士の数を3000人以上としていましたが、正しくは約1万人です。訂正致します。内容も一部修正しています。 2020年7月30日 12:00」と注釈がつき、内容が修正されていました。何か区長サイドから働きかけがあったのかな。

世田谷区長、ようやく「誰でも、いつでも、何度でもPCR検査」が見当違いだということに気づいたか。「最初からそんなこと言ってない」って態度をとりそうな予感もするけど。

ちなみに未だに議会で本件、何も議論していませんから、考えが変わったのだとしたら、あくまで自発的な”変節”と思われます。

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