給食費を滞納している児童・生徒のお金は誰が負担するべきか
現在、世田谷区で進められている学校給食費の「公会計化」。
(これまでのブログはこちら)
教育政策の多くは、”非科学的”な議論に終始していると思う①
教育政策の多くは、”非科学的”な議論に終始していると思う②
そもそも区が導入しようとしている「仕組み」についても、指摘すべき点が多く見当たるという話。
先ず、負担の公平性に関する問題。
現在、世田谷区の給食率の収納率は99.3%程度となっているようです。
0.7%のお金が未収になっている。
では「お金を払っていないけど、食べている」人の分(0.7%分)は誰が負担しているでしょうか。
行政が負担しているわけではなく、正しくお金を払っている人が負担している事になります。
(集めたお金で食材を買い、その食材で給食を提供している)
では
「公会計のシステムが導入された場合、教育委員会が集めたお金を学校に移す際に未収分はどうするのか?」
「教育委員会が補てんするのか?」
決算委員会でこう質問すると、答弁は「まだ決めていない」というもの。
そんなことも決めてないなんて甚だ心細い。。。
でも、これは当然、教育委員会が未収分は一旦補てんしたうえで学校にお金を移すべきでしょう。
なぜなら、公会計システムでは、督促、臨戸訪問は教育委員会の仕事になります。
これが公会計の場合のお金の流れ。
例えば以下の場合を想像してみてください。
・保護者Aが給食費を滞納している。
・教育委員会は定期的に督促をしている。
・督促の効果があり、給食費を支払ってくれたが、その際に児童は既に卒業した後だった。
・支払われたお金はどうするべき??
仮に、未収分を教育委員会が補てんせずに、学校の児童全員で負担していた場合、卒業した児童の各家庭に未収金を割り勘にして返して行かなければなりません。そんなことは、現実的には不可能ですよね。
であれば、教育委員会は、使ってもいないお金を支払わせて、懐に入れることになってしまいます。
だから、未収金は一旦教育委員会が建て替えた上で学校にお金を移すのが正解。
(結局払ってもらえなかったお金は一般会計なり給食費特別会計なりに計上)
あと、生活保護世帯への対応について。
生活保護世帯においては「教育扶助費」として給食費が支給されます。
この給食費が支払われる際、事情がある場合は、被保護者にお金が支払われるのではなくて、区から直接学校長に支払うことができることになっています。
「お金が手元にあると、配偶者が子どもの給食費まで勝手に使ってしまう」などの例もあるのかもしれませんね。
区から被保護者を経由せず、直接学校長に給食費を払うことができるのです。
この仕組みを、公会計の仕組みにスライドすると「区から直接、教育委員会に給食費を支払う」ということになるわけです。
一方、生活保護法をみると・・・・
第三十二条 教育扶助は、金銭給付によつて行うものとする。但し、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によつて行うことができる。
2 教育扶助のための保護金品は、被保護者、その親権者若しくは未成年後見人又は被保護者の通学する学校の長に対して交付するものとする。
と書いてあります。
法律上、教育委員会に直接給食費を交付することはできないんです。
「この法律との兼ね合いはどうなるのか?」
「生活保護世帯が利用できる”給食費の直接払い”という仕組みがなくなってしまうではないか?」
という趣旨で質疑で取り上げましたが、区の担当者は、こういう法律の仕組みを考慮した対応を全く考えていないようです。
当然、桃野からは「法との兼ね合いから検討が必要」と指摘しております。
そしてもう一点。
質問を進めて行くと、結局は、督促や臨戸訪問を行なう為に人員を増やすと言うことらしいのですが、結局人員の増員で賄うという事であれば、システムで合理化できる部分が少ないという事の証左でもあります。
桃野はこれまで、学校事務職員の配置が合理的でない(大きな学校に1名、小さな学校に2名の例ある)、学校事務職員の職務の範囲が不明瞭(配置にも職務の配置にも基準が無い)という点を指摘し、基準をつくるべきと主張してきました。
システムの開発、導入で多額の予算を使い、人員も増やすということであれば、学校事務職員の配置、職務を適正に定めて、給食費の様々な業務に当たらせる方がよっぽど効果的だと考えています。
(学校で教員と事務員が連携して、給食費の滞納から、家庭の問題を見つける事にもつながるだろうし)
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