教育政策の多くは、”非科学的”な議論に終始していると思う②
政治の場で取り上げられるテーマは多岐にわたります。
しかし、その中で誰でも一家言あって、議論に参加しやすいテーマといえば一番に「教育」ではないでしょうか。
広く議論が行なわれるというのは、基本的には良い事。
でもその一方で、具体的な事実や科学的データをおざなりにしたまま「何となくそう思う」といった感覚で議論が進んでしまう事も多い気がします。
さて、世田谷区では現在、学校給食費の「公会計化」が進められているという話を、先日ブログでお伝えしました。
(先日のブログはこちら)
世田谷区の考えは以下です。
①現在の給食費の「私費会計」の事務作業が教員の時間を奪っている
②教員の「子どもと向き合う時間」を増やす為に公会計化が必要
③その為に、イニシャルコストで5,000万円、その後毎年1,650万円の税金を投入する
先ず①に関する疑問。
「私費会計」の事務作業が教員の時間をいかほど奪っているのか。
世田谷区は、その答えとして以下調査結果を示しています。
でも、この資料、ちょっとおかしい・・・
最後の赤線がひいてある所「※各校の担当者一人当たりの月平均業務時間であるため、学校毎の実際の業務時間は、複数の教員が給食事務を担当している事が多いことから上記と異なる」と書いてあります。
つまり、ある学校では「Aさんが一人でこの業務に従事していて、月に6時間かかってます。一方別の学校では「同じような業務をBさんとCさんと、Dさんの3人で月2時間ずつやってます」ということかもしれません。
仮に「月に20時間かかってるんです!大変なんです!」と言われても、単なる業務分担の偏りによるものかもしれないということなんですよね。
あと、仮にですが、仕事量の偏りがなく、上記数字が出て来たとします。
そうであっても、この数字には「?」がつきます。
例えば徴収管理業務で、一番多い答えは「月4〜6時間」とありますが、中央値の5時間だとして、仮に20日間で割ると、一日15分。
同様の考え方で滞納整理業務の時間を加えると、プラス6分です。
これは大きな負担なのか。
今回の施策は「教員は忙しくて、子どもと向き合う時間が不足している」問題を解決するインパクトとしてどれほどのものなのでしょうか。
月末や月初に事務が偏在するということは考えられると思いますが、そうであれば正確に「いつ、何人が、どれくらいの時間をかけて、この事務に取り組んだか」を調べるべきです。
それぐらいのことは、パソコンのログなどをとるだけで簡単に調べられるのだから。
そもそも、この事務にかかる時間をなくせば「子どもの学力が向上したり、問題行動を起こす子どもが減ったりする」のでしょうか。
今はそれも、単なる「何となく」のストーリーでしかありません。
例えば「この事務に全く関与しない教員」の担任クラス、「この事務に関与している教員」の担任クラス、この2グループを作って、その結果がどうなるか。「条件の差から結果の差」を推し量ることで、科学的データになりうるはずです。
限りある税金、人的資源。
教育分野の中だけでみても、予算があるなら投入したい課題は数限りなくあるのです。
特別支援学級、不登校、老朽設備の更新などなど。
何となくの雰囲気で多額の税金を使われては困るのです。
教育施策は、特に科学的手法が用いられないまま事が進む分野であることを痛感しつつ、そうであってはいけないと考えています。
更に、そもそも区が導入しようとしている「仕組み」についても、指摘すべき点が多く見当たります。
その詳細は次回ブログで。
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