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2020-06-15

新型コロナウィルス。感染症対策の為には「保健所の数が足りない」という区長の考えは間違い。

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世田谷区議会議員、桃野芳文です。

本会議での桃野の質問より「保健所の機能強化について」。「保坂区長の軽率な情報発信が区民をミスリードしている」という問題も含んでおり、そういう意味では、先日のブログにも通じる話です。

参考↓
世田谷区長の余りに不誠実な答弁。怒りで声が裏返ってしまった。ぜひ動画でご確認を

今日のブログはやや長いので、途中で読むのが面倒くさくなったら、一番下までスクロールして動画をご覧ください。

先ずは、以下に添付した2020年5月10日の保坂区長のツイッター。

区長は「行政機関を削減して、「小さな政府」に突き進むことが「行政改革」だという時代が長く続いた。世田谷区もかつて保健所は3つあったが、今は世田谷保健所だけで92万人に対応する。2月・3月・4月と危機的事態に際して、あまりに負荷が大きい。コロナ禍が落ち着いたら保健所の充実・再建に取りくみたい。」としています。

桃野はこのツイートを見て「区長、また、変なこと言ってるよ・・・」というのが正直な感想。先ず、世田谷区内にかつてあった保健所は3つでは無く4つです。そして「コロナ禍が落ち着いたら」というのも理解できません。保健所の充実に、今取り組まずしていつ取り組むのでしょう。更に「保健所の再建」という言葉からは、区長が区の保健行政の仕組みを正しく理解していないことがわかります。どうやら、区長は保健所が行革で壊されたと言いたいようですが、事実は全くそうではありません。

保健所の役割には変遷があります。平成6年6月、非自民・非共産連立政権であった羽田孜内閣下で施行された地域保健法により、市区町村は保健センターを設置できるようになりました。それに基づき世田谷区は、平成9年度に保健所の一部機能と福祉事務所を統合して区内各支所(5地域)に保健福祉センターを設置。更に支所内に健康づくり課を創設するなど保健所の機能を再編した上で、保健行政の強化を進めてきました。地域保健法の弊害として昨今指摘されているのは、PCR 検査が中々増えなかったことですが、これは都道府県や政令市などに設置される地方衛生研究所の機能低下に着目した指摘であり、保健所の数とは関係ありません。保健所の数が減ったから機能が弱まったという区長の理解は短絡的、幼稚に過ぎます。

ここで、コロナ禍で顕在化した保健所の課題を挙げます。先ず、保健所が区民から電話相談を受ける「帰国者・接触者相談センター」。一時、回線がパンクし終日電話がつながらない状態になってしまいました。元々そのような機能がないところに国がいきなり「各保健所に設置するように」と話を下ろしてきたわけですから、当初十分な体制を作れなかった事は自治体の責任ばかりとも言えないでしょう。しかし区が機動的に対応できなったことは反省し今後に生かさなければなりません。

次に検査陽性者等への対応です。当然保健所は区内で検査陽性者が多く発生すればするほど、その対応で負荷がかかります。一例を挙げます。新型コロナウィルス感染症の発生源となった中国湖南省武漢からの政府チャーター機による帰国者や、船内で集団感染が起きた大型客船ダイヤモンドプリンセス号の乗客の受け入れ先の一つになった自衛隊中央病院は世田谷区内にあります。病院が作成した資料では、ダイヤモンドプリンセス号からの受け入れは16の国・地域の外国人67名を含む109名。日本語を母語としない多くの方々も含めて、地元区である世田谷保健所が感染者の行動履歴の調査や、入院勧告に関する事務を担うことになり大きな負荷がかかりました。

次に救急車で搬送される方々の入院調整。東京都が自治体を跨いで調整を行う「調整本部」は、主に平日や土日の日中に入院先の調整を行うことから、特に夜間に保健所に負荷がかかる業務となっています。

次に感染者の発生届を東京都に送る際、未だファックスを使っているようなアナログな仕組みも問題です。手間がかかる上に計上ミスや報告漏れが起き、非効率な事務となっていることは既に報道されている通りです。これら課題は保坂区長の言うように、保健所の数を増やせば解決するという類のものではありません。そこで、先の本会議では以下施策を具体的に提言しました。

先ずは、相談機能の強化。区では電話相談の代替手段として人工知能(AI)で自動回答するチャットボットを導入済ですが、やはり現在相談窓口の主流は未だ電話でしょう。感染拡大局面で増え続ける電話相談にどう応えるか。電話回線の数を適切に設定するのはもちろんですが、電話を受ける人的資源は無限ではありません。限られた人員で対応できるよう工夫する必要があります。例えば、緊急性の高い相談を優先的に受ける手段として、苦情や簡易な問い合わせなどは保健師や医師が受ける前に選別し、事務的な仕事に従事する職員が対応する仕組みに改めるべきです。民間事業者ではオペレーターにつなぐ前に、相談者に数字と#を電話に打ち込んでもらうなどして相談内容に応じて受け手を選別する手法が一般的です。又、既に神奈川県が既に導入していますが、電話相談が急増する事態になれば相談業務の外部委託も必要でしょう。

加えてICT化も進めるべきです。大阪府では自宅やホテルなどで療養する軽症や無症状の感染者の健康状態を把握するシステムを導入しています。これは感染者自らが体温やせきの有無、息苦しさなど注意が必要な13項目をスマートフォンなどで入力する仕組みです。以前は、保健所職員が自宅などで療養する感染者に毎日電話で聞き取りをし、その内容をコンピューターに入力していましたが、現在は、感染者が情報を入力すると、保健師や府の担当部署などとオンライン上で即座に情報共有される仕組みになっているそうです。

加えて、保健師が機動的に参集できる仕組みも必要です。世田谷区には本庁、支所合わせて116人の保健師がいます。平時は地域に分散している保健師が、有事には速やかに保健所の指揮命令下に入る組織体系に改めるべき。更に区立小中学校が休業時であれば、保健師の資格を持つ養護教諭にも参集してもらえるはずです。

あわせてそうした職務に従事する職員が過重労働にならぬよう土日夜間を含めた勤務シフトを作成し適切に休養できる体制も作るべきです。これらの施策に取り組むよう区長に提言しました。区側の答弁は以下の内容。

・(宮崎副区長答弁)保健行政の推移等
議員の指摘のとおり、平成6年に地域保健法が制定されたことを踏まえ、区は平成9年度に新たな地域保健福祉サービスの推進体制として、4つの保健所・1つの保健相談所と5つの福祉事務所を統合再編し、1つの保健所と5つの保健福祉センターを設置した。この組織改正は、保健所の高度専門性の確立を図るとともに、保健と福祉の一体的な体制を整備したものであり、これによりライフステージを通じた利用頻度の高いサービスを地域で総合的に提供してきた。一方で、今般の新型コロナウイルス感染症が急速に拡大する状況下において、感染症予防法に基づくまん延防止に取り組むには、現在の保健所の体制では対応に限界があり、感染症対策組織の抜本的な強化が必要だと考える。今後懸念される感染第2波・第3波に備え、まずは保健所が専念すべき業務を明確にした上で、有事の際に迅速に参集し、機動的に対応可能な組織体制の構築に早急に取り組む。今般の対応を教訓に、データの分析や広報対応、検査体制の確保など、新型コロナウイルス感染症対策本部における庁内の役割分担を一層明確化し、限りある人員でより迅速かつ効率的に対応できる体制について検討する。

・(辻保健所長答弁)電話相談について
一般的な問い合わせに対応する「一般相談」と症状のある方を必要な診察や検査につなげる「帰国者・接触者相談」の2つを適切に切り分け、より緊急度の高い帰国者・接触者相談に保健師等の専門人材を優先的に投入し、迅速に対応できるよう検討している。その手法の一つとして外部委託も選択肢と考えており、現在必要な派遣委託の規模を適宜検証し、区職員による対応とあわせ、 相談内容や件数に応じて臨機応変に対応できる体制を確保できるよう取り組む 

・(辻保健所長答弁)ICT化について
国が導入したオンラインでの患者情報等管理システムに関する東京都の動向を見据え、在宅療養者の症状に合わせた診療を行える仕組みを構築できるよう医師会や病院等とも連携しながら調整を進める。 

・(辻保健所長答弁)土日夜間を含めた勤務シフトの設定など適切な従事体制の確保について
養護教諭の活用やその他の人材活用も含め、新型コロナウイルスに関する庁内全体の応援状況も踏まえ、関係所管と調整を図り、継続的かつ安定的に相談等を行う体制の確保に努める。 

(以上、世田谷区の答弁より)

保坂区長のように「新たな感染症の出現に備えて、平時から大きな人員、設備を抱えて置くべき」と言うのは適切な施策とは思えません。大きな維持コストに税金を投入しながら、過大な人員を抱えていても、そこにいる人達の「練度」は全く不足したまま時を過ごすことになります。そうなれば、せっかくの人員であっても、いざ有事の際にきちんとした仕事ができない可能性が高いでしょう。必要なのは適切な役割分担と機動力です。保坂区長が、世田谷区の保健行政をおかしな方向に暴走させないよう引き続き議会から注視し、具体的な政策提言を行います。

■6月10日の代表質問の様子はこちらからご覧ください。(特にお勧めの視聴は34分15秒〜です)

■動画は世田谷区の区議会のサイトからもご覧いただけます→こちら

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