ひきこもり。家庭内暴力がある事例は2割、家族への支配的言動等がある事例は4割。では問題行動が家族外に及ぶ事例は?
世田谷区議会議員、桃野芳文です。
元農林水産事務次官が長男を殺害したとされる練馬区での事件。
【元農水次官、川崎殺傷に触れ「長男が危害加えては…」】(朝日新聞デジタル)
容疑者は調べに対し「長男は引きこもりがちで、私と妻に暴力を振るうこともあった」「暴力は中学生の頃からあった」と述べているとのこと。
引きこもりの息子が日常的に家族に暴力をふるっていた。このままでは周囲の人をも傷つけるかもしれないと憂慮した親がその息子を殺す。
なんという悲劇でしょうか。
ひきこもり状態にある人が、家庭内で暴力をふるうようになったとき、家族はどうすればいいのか。今朝の朝日新聞で、精神科医の斎藤環筑波大教授のお話が記事になっていました。
桃野、以前、斎藤環教授と山登敬之医師の共著を読んだことがありまして、とてもわかりやすく、ひきこもり、発達障害、トラウマ、拒食症、うつなどの話を学ぶことができた経験があります。
今朝の記事内容もわかりやすかった。
記事によると。
保健所・精神保健福祉センターへの「ひきこもり」相談を分析した実態調査(2003年)では、家庭内暴力は2割、器物破損や家族への支配的言動などがある事例は4割。一方で、迷惑行為など家族以外への問題行動は4%にとどまるそう。
上記練馬区での事件では、父親は「幼稚園の運動会の音がうるさい」と言う息子を注意。息子が不機嫌になるのを見て、「怒りの矛先が子どもに向いてはいけない」と感じて数時間後に殺害。とされていますが、暴力が家族外に向く頻度というのは非常に少ないようです。
ただ家庭内暴力への対処を誤るとエスカレートする恐れもあるでしょう。
斎藤教授はまず暴力の背景を理解する必要性を訴えています。
・暴力には「家族が刺激している暴力」と「慢性型の暴力」がある。
・前者は家族が本人の人格を否定したり、怠け者扱いしたりすることへの反発として起こる。皮肉や嫌みを慢性的に言われ、否定的な言動で苦しめられている当事者は多い。やめれば暴力は収まる。
・根源にある感情は、悲しみ。本人も自分を責めている
・暴力を収めるためには、本人の言葉に最後まで耳を傾ける必要がある。反論や弁解はせず、全て受けとめる。
・その上で、暴力には徹底拒否を貫く。「一番やってはいけないのは、暴力を受け入れること」。我慢したり甘んじて受け入れたりすると暴力を助長しかねない。「暴力は嫌だ」とはっきり伝える。
・問題を外部に「開示」することも必要。
・まずは、他人を家に入れる。家庭内暴力は第三者の目の前では起こらない。警備会社のサービスやファイナンシャルプランナーの活用などでも応用できる。
・それでも身の危険があるときは、覚悟を決め通報や避難を考える。
・通報は逮捕が目的ではないため、事前に警察に相談し「逮捕や入院は避けたい」と伝えておく。通常は警官が現場に駆けつける頃には暴力は収まっている。
・もう一つの方法は避難。短期賃貸マンションなどを確保し、避難したらすぐに「暴力が嫌だから逃げたが、あなたが嫌だからではない」と電話する。「親から捨てられた」と自暴自棄になり自傷行為などに至るのを防ぐため。その後も毎日電話する。
・暴力が完全に収まるまでは決して帰らない。1、2週間後を目安に一時帰宅して何度か繰り返す。
斎藤教授は記事の最後に「自分の経験でしかないが、この方法でほとんどの暴力は収まっている実感がある」としています。
世田谷区では、15~39歳までの方と、そのご家族の方を対象に相談窓口が設置されています。お悩みの方、ご活用頂きたく思います。
■メルクマールせたがや
電話:03-3414-7867
ファックス:03-6453-4750
■せたがや若者サポートステーション
メール:y-setagaya@roukyou.gr.jp
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