制度を改めるべき。学びへの意欲があるにも関わらず、何らかの理由で進学を諦めざるを得ない方々に広く支援の手が届くよう。引き続き区に提言を続けます。
世田谷区議会議員、桃野芳文です。
本日のブログも先の本会議一般質問よりご報告です。
1)区立小中学校における新型コロナ対策について
2)児童養護施設等退所者への支援について
3)生活保護法第63条の規定による費用返還について
4)指数(保育の調整基準)について
5)区の燃料電池自動車について
本日は、取り上げた5つのテーマのうち2番目。「2)児童養護施設等退所者への支援について」です。
世田谷区では、児童養護施設の退所者に対して以下3つの支援策を行なっています。
・返済不要の給付型奨学金
・月一万円で住まいを提供する住宅支援
・世代を超えた交流を促す居場所支援、地域交流支援
これについて区長は、2019年6月19日にはウェブサイト論座に「児童養護施設を巣立つ若者へ奨学金 世田谷の挑戦「奨学基金」で広がる寄付文化。「フェアスタート事業」に予想を超える反響」という記事を書いています。
[報告] 2019年11月30日現在で、「世田谷区児童養護施設退所者等奨学基金」への寄附が1億218万7146円となりました。3年半で1217件の個人・法人からの寄附で、ふるさと納税分も含んでいます。フェアスタートの基盤のために使います。
ありがとうございます。https://t.co/CYgadGQhtq— 保坂展人 (@hosakanobuto) December 7, 2019
又2020年8月30日の保坂展人さん個人ツイッターでは「児童養護施設退所者への支援があまりにも薄いことに衝撃を受け、世田谷区長としてフェアスタート事業を開始した」とツイートしています。
そこで、世田谷区長として児童養護施設等を退所した若者たちを対象として「フェアスタート事業」を開始しました。給付型奨学金を創設して、募金を呼びかけたところ多くの方に賛同いただいて、1億4千万円となり、コロナ禍の中で給付拡充を考えています。
— 保坂展人 (@hosakanobuto) August 30, 2020
この事業は平成28年度からスタートし、区長は自画自賛のツイートを連発。区の広報物を見てもいかにも事業がうまくいっているかの情報発信ばかりですが、実態はどうでしょうか。
まず住宅支援ですが、全5戸定数13名の事業であるにもかかわらずこれまで利用者は年間5名を超えたことがありません。
そして給付型奨学金ですが、年度別の給付者数を見ると、平成28年度は11名に給付、その後どんどんと給付者は減り、令和3年度は7名です。また制度開始以来6年間で給付を受けた方の合計は30名ですがその内訳をみると中退が7名、そしてなんと区が状況不明(卒業したのか中退したのかもわからない)としている方も2名います。
※令和2年度と令和3年度を比較して、奨学金受給者の人数は同じなのに給付金額合計が大幅に増えていますが、区の説明によると「学費の高い大学等への進学者が比較的多く一人当たりの給付額が昨年度より高くなったため」とのことです。
中退と不明を合わせて奨学金給付者の実に3割という状況になるのは問題だと考えます。原資は公金です(寄付により区の予算となったお金+区民の大切な税金)。「お金を渡してあとは知らんぷり。退学しようが構わない」というのはあまりに無責任。お金を渡すだけでなく、奨学金受給者が途中で退学しないよう区がしっかりとサポートしなければお金が十分に生かされたことにはならないのでは無いでしょうか。
ましてや「就学中なのかやめてしまったのかわからない」などというのは、区の仕事放棄に等しいのでは無いでしょうか(卒業年度前に奨学金の申請が途切れるということは退学してしまった可能性が高いとは思います)。
「美しい事業を始めました」と鳴り物入りで事業をスタート。しかしその後はほったらかし。こんな区長の態度は問題です。今後、中退、不明を生まないための伴走型サポートも必要でしょうし、就学をやめる理由は何なのか。実態を把握し手を打たなければなりません。
区はこの給付型奨学金に対してふるさと納税の仕組みを使って寄付を募っており、令和3年3月末時点の寄付総額は約1億8千万円にものぼります。一方でこれまで奨学金に充当された寄付金は約1500万円にしか過ぎません。寄付は引き続き募られており、これからも増えていくのでしょう。年間10名にも満たない奨学金受給者に対して1億8千万ものお金をどのように活用していくのか。区に問うと「支援を必要とする対象者や対象経費などの拡充について見直す」との答弁がありました。
桃野はこの区の給付型奨学金について、導入前から何点か「区の案を変えるべき」と提案を行っていました。その中で大事な点は2つ。
1)就学継続意欲を強く持てる制度にすること
2)奨学金の給付対象者を幅広く設定する
例えば、以下のようなことが考えられます。
1)就学継続意欲を強く持てる制度へ
・基本的には無利子貸付型。卒業し且つX年間(3年程度?)就業すれば返済不要。更に学ぶ(大学院、資格取得などもOK
・病気、会社都合などで就学就業が途切れてもその後一定期間内に再始動すれば、空白期間はカウントしない。
・東京都の制度で良い奨学金制度(上記のように返済不要となる要件あり)があるので区は「二重行政」にならないよう隙間を埋める施策を
2)奨学金の給付対象者を幅広く設定
・児童養護施設退所者だけに限定するのはおかしい
・経済的な理由で就学を諦めざるを得ない方々を広く対象にすべき
現在、決して上手くいっているとは言い難い区の奨学金事業。学びへの意欲があるにも関わらず、何らかの理由で進学を諦めざるを得ない方々に広く支援の手が届くよう制度を改めるべき。引き続き区に提言を続けます。
質問の様子は以下の動画でご覧ください。
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