生活保護のもと、医療扶助を受けていていた方が資力を得た場合、世田谷区は、過去に遡って医療費10割の返還を求めています。これは改めるべきではないか。
世田谷区議会議員、桃野芳文です。
本日のブログも先の区議会一般質問よりご報告です。
1)区立小中学校における新型コロナ対策について
2)児童養護施設等退所者への支援について
3)生活保護法第63条の規定による費用返還について
4)指数(保育の調整基準)について
5)区の燃料電池自動車について
の「3)生活保護法第63条の規定による費用返還について」です。
1)、2)については過去ブログを参照ください。
【保坂区長の施策「無症状の児童生徒らに抗原定性検査を行い安全を担保する」は全く非科学的、非合理的な施策。桃野は明確に反対し続けています】(2021.12.02 桃野ブログ)
【制度を改めるべき。学びへの意欲があるにも関わらず、何らかの理由で進学を諦めざるを得ない方々に広く支援の手が届くよう。引き続き区に提言を続けます】(2021.12.03 桃野ブログ)
3)生活保護法第63条の規定による費用返還について。
我が国には、経済的に困窮した方々を支えるセーフティーネットがあります。それが生活保護。例えば「病で働けなくなってしまった。蓄えも底をつき、生活が立ち行かない」という場合は、是非役所に相談し、場合によっては生活保護で暮らしを維持して下さい。これは法で定められた国民の権利でもあります。
生活保護法の第四条で以下定められています。
第四条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
生活保護は、困窮時には活用して頂きたい制度ですが、法に定められている通り、生活を維持するための「資産」がある場合は、その対象になりません。簡単に言えば資産があるなら、生活保護ではなく、その資産を活用して暮らして下さいということ。
ということで、生活保護受給者が資力を得た場合、遡って保護金品の返還を求められることがあります。例えば以下のケース。
・区内に住むAさんとその夫Bさんの世帯は高齢且つ病で働けず経済的に困窮し生活保護を受けていました。
・特にBさんは大病を患い手術や長期入院をしていましたが、生活保護により医療費はその全額が医療扶助となっていました。
・長い闘病生活を経てBさんは亡くなりAさんが残されました。
・Bさんが入院、手術を繰り返していたちょうどその時期に、Aさんの親族が亡くなっていたことが判明。紆余曲折を経てAさんはBさんが亡くなった後に、親族の遺産を相続することになりました。
・Aさんは区に、遺産を相続したので生活保護を必要としない旨を申し出たところ、区はAさんに対し「親族が亡くなった時点で資力が発生していることになるので、その時点に遡り保護金品を返還せよ」と求めます。その中には亡くなった夫Bさんの医療扶助も全額含まれるとの事です。
・ちなみにBさんの医療費は、AさんBさんの懐に入ったお金ではなく、医療機関に支払われたお金です。
・Aさん夫婦が生活保護受給者でない場合、医療を受けた場合の自己負担は後期高齢者医療における自己負担分で基本は医療費の1割負担、現役並所得者でも3割負担です。
・生活保護費のうちBさんの医療扶助の部分は、保護を受けていなければ後期高齢者医療の被保険者として一部の負担を要したに過ぎないにも関わらず、区はこれを大きく超える扶助費全額つまり医療費の10割の返還を求めるというのです。
区がこうしたことをするのは、我が国の国民皆保険の趣旨に反するものではないか。又Aさんの経済的自立を妨げるものではないかと考えます。Aさん夫婦のようなケースで区が医療扶助費の全額の返還を求めるのは、裁量権の乱用で妥当性を欠くのではないか。区に見解を求めました。
区からは以下の答弁がありました。
・生活保護受給者には国民健康保険が適用されないため、医療費の10割が医療扶助とし て支給される。このため費用の返還を求める際も、支給した医療費10割の返還を求めることとなる。
・支給した保護費の全額の返還を求めることが世帯の自立を著しく阻害する場合には、返還免除することができるが、国が実施要領に定める認定基準には、保険適用時との差額を免除するという考え方はない。
・しかし、国民健康保険等では自己負担額のみで足りることからすると、医療費10割の返還は、保険適用者との均衡を失していると考える。
・区では、国の実施要領に対する改正意見として、「国民健康保険による給付と均衡を失しない範囲で返還額を減額できるようにされたい。」との意見を、都を通じて国に提出した。今後も、制度による返還額の均衡との観点より、引き続き国や都に働きかけていく。
現在は、まだAさん世帯のような事例で医療費全額の返還を求めているということですが、区もこうした事務は改善すべきだと考えていることがわかりました。世田谷区には是非、他自治体とも連携し実施要綱の見直しを国に働きかけてもらいたいですが、実施要綱はあくまで国の示す基準という位置づけ。事務の実施主体である自治体、世田谷区には是非先駆的な対応に乗り出すことを期待します。
■質問と答弁の全体は以下の動画でご覧ください。
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