告発の時点で調査に乗り出していれば、その後の死亡事故は防げた可能性がある。ということ
これまで桃野は世田谷区議会にて、公益通報に関する問題を取り上げて来ました。
かつて桃野が追及した事件では、世田谷保健所に公益通報を行なった内部告発が不適切に扱われた事例があります。
ある事業者の不当な行為を告発した内部告発者について、世田谷保健所がその名前や業務上知り得た情報を事業者側に伝えるという前代未聞の大不祥事でした。(保健所側はあくまで不祥事という言葉を認めませんでしたが)
この事例とはパターンが異なりますが、今、ある事件で行政機関の内部告発に対する姿勢が強く批判されています。
■千葉の医療死亡事故、厚労省が内部告発を放置(5/8朝日新聞朝刊より引用・抜粋)
厚生労働省が千葉県の医療機関の手術で死亡事故が相次いでいることや、歯科医が無資格で麻酔をしていることを知らせる内部告発を受けながら、調査していなかった。
内部告発をしたのは、2010年9月まで千葉県がんセンター(千葉市中央区)に勤めていた麻酔科医の志村福子さん(42)。同センターで医師が行うべき麻酔を歯科医が日常的に行っていること、腹腔(ふくくう)鏡手術で死亡事故が相次いでいることを告発する内容のメールと文書を11年2月、公益通報者保護法に基づいて内部告発を受け付ける厚労省の行政相談室に送った。
ところが、相談室は志村さんがすでに退職していたため、「保護法に基づく内部告発ではない(法律が保護する『労働者』ではない)」と判断。文書を送り返し、管轄の千葉県に告発するよう伝えた。
厚労省によると「無資格麻酔」は医師法違反の恐れがあり、メールは相談室から担当の医政局に送られたが、対応を検討したかを確認する記録は残っていないという。医政局は「公益通報制度の枠組みに沿って対応した。制度が変わらない限り、あれ以上の対応は難しかった」と説明。
当時担当だった医政局の岩渕豊・元総務課長は「告発があったか記憶になく、コメントできない」と話している。
その後、千葉県警が医師法違反(無資格医業)容疑で捜査に着手し、当時の手術管理部長と歯科医を書類送検。千葉地検は12年3月、犯罪事実を認定した上で起訴猶予処分とした。
腹腔鏡手術の際の死亡事故は告発後も相次ぎ、千葉県が先月22日、第三者委員会で調査を始めると発表した。
<引用・抜粋ここまで>
記事から読み取れるのは「告発があった時点で厚労省が調査に乗り出す、又は積極的に関係行政庁と連携していれば、その後の死亡事故は防げた可能性がある」ということ、又「警察が捜査を行なった経緯は記事からは不明(記事の書きぶりからは厚労省からの情報提供で捜査に着手したのではないよう)だが、警察の捜査及び裁判を経て犯罪事実が認定されている」ということ、です。
今回のケースでは「公益通報である」と行政機関が認定することは、ハードルが極めて高いこと、指導・管理を”する側”と”される側”に馴れ合いの土壌があれば、告発を受けての動きが鈍くなることなどの課題が示唆されています。
光前幸一弁護士のコメントも至極最も。
これ以上、不幸な事件を起こさないためにも、公益通報制度の改善は喫緊の課題です。
【2014.05.08朝日新聞朝刊】
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