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世田谷区の桃太郎 桃野芳文Webサイトです
2023-08-10

中野区議会議員選挙の結果は、都選管により当落が入れ替わる判断。では世田谷区議会議員選挙の結果はどうなる?桃野の考えはこちらです。

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世田谷区議会議員、桃野芳文です。

選挙は民主主義の根幹をなすもの。当然、その開票事務にも正確性が求められます。1票で当落が決まることもあり、数え間違いなどということは許されません。

言うまでもありませんが、選挙に関連したあらゆる事務に関わる方々は相当の緊張感(「万が一にも間違いがあってはならない!」という気持ち)を持って、ことにあたっておられることと思います。

さて、今年4月の統一地方選挙で1票が当落を分けた中野区議会議員選挙。都選管が「有効」としていた1票を覆す判断をしました。

判断を分けたのは「類似性」。

中野区の選挙管理委員会は、「いさしんいち」と書かれた票を「井佐氏に投票しようとして誤記したもの」と判断し、最下位当選した「井佐哲郎 」氏の票としてしていましたが、東京都選管は「類似性がなく誤記と認め難い」として無効票と認定しました。最下位当選だった井佐氏と次点だった候補者の当落が入れ替わる判断です。

井佐氏が、都選管の判断に不服がある場合は、東京高裁に提訴することができ、そうなった場合は裁判の結果が出るまで選挙結果は確定しません。

なぜ、中野区選管、東京都選管で、こうした判断の違いが出てくるのでしょうか。

どういった票を無効票にするかは公職選挙法で定められており、衆議院選挙、参議院選挙”以外”の選挙については以下の条文が根拠となります。(太字は筆者強調)

(無効投票)

第六十八条 衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。

一 所定の用紙を用いないもの

二 公職の候補者でない者又は第八十六条の八第一項、第八十七条第一項若しくは第二項、第八十七条の二、第八十八条、第二百五十一条の二若しくは第二百五十一条の三の規定により公職の候補者となることができない者の氏名を記載したもの

三 第八十六条第一項若しくは第八項の規定による届出をした政党その他の政治団体で同条第一項各号のいずれにも該当していなかつたものの当該届出に係る候補者、同条第九項後段の規定による届出に係る候補者又は第八十七条第三項の規定に違反してされた届出に係る候補者の氏名を記載したもの

四 一投票中に二人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの

五 被選挙権のない公職の候補者の氏名を記載したもの

六 公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。

七 公職の候補者の氏名を自書しないもの

八 公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの

先ず、六「公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない」については皆様ご注意ください。例えば候補者の氏名の他に「がんばれ!」と書いたり、ハートマークをつけたりした投票用紙は無効になってしまいます。

そして、八「公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの」。中野区議選の例でいえば「いさしんいち」は誰のことを指して投票したのか不明、と都選管が判断し無効にしたと言うことですね。

一方で、以下の判例もあります(太字は筆者強調)

「候補者制度を採る選挙においては、選挙人は候補者に投票する意思をもって投票に記載したものと推定するべきであるから、投票の記載が候補者氏名と一致しない投票であっても、 その記載が候補者氏名の誤記と認められる限りは当該候補者に対する投票と認めるべき」(最高裁判所昭和 31 年 2 月 3 日判決)

「投票を 2 人の候補者氏名を混記したものとして無効と解するのは、当該投票の記載がいずれの候補者氏名を記載したのか全く判断し難い場合に限られるものというべきであって、そうでない場合には、いずれか一方の候補者の氏名に最も近い記載のものはこれを当該候補者に対する投票と認め、合致しない記載はこれを誤った記憶によるものか、又は単なる誤記によるものと解すべきである」(最高裁判所平成 4 年 7 月 10 日判決)

「字数が一致する程度、投票の記載中の候補者Aの氏又は名と一致せず他の候補者Bの氏又は名と一致するとされた部分が、その表示上又は音感上候補者Aの氏又は名とも類似しているか否か、その類似性の程度等に重点を置きながら、当該選挙における候補者の活動状況等も加味して、当該投票の記載自体を全体的に考察して判断する」(東京高等裁判所平成 30 年 7 月 25 日判決)

今年4月の世田谷区議会議員選挙でも1票+按分票が当落を分ける結果となり、次点となった候補者が異議申し立てをしています。

報道によると、最下位当選者には同じ読みの姓の落選者がいたことから「最下位当選者の案分票が適切だったかどうか点検してほしい」と次点の候補者は主張されているようです。

先の世田谷区議会議員選挙で最下位当選となったのは「大庭正明」議員でしたが、同じ読みの姓である「大場ただし」候補もいました。次点となった候補者は、おそらくですが「大正明」票の扱いについて再度点検して欲しいと言うことを主張されているのでしょう。

しかし、上記の公職選挙法第六十八条、関連する判例を見れば「大庭正明」や「おおば正明」と記載された票に加えて「大場正明」と記載された票も、大庭正明の誤記であり、大庭正明議員の票であると解するのが正しい判断だと思われます。

中野に続き、世田谷区議選の不服申し立てについても、今月中には東京都選管が裁決する予定になっています。

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