区長がよく使う「スーパースプレッダー」という言葉。聞いた人が「無症状でウイルスをばらまいている感染拡大の張本人」「モンスターのような存在」という印象を持ってしまう言葉ではないでしょうか。
世田谷区議会議員、桃野芳文です。
昨日のブログで区長記者会見の内容について取り上げました。区長が会見の中で、新型コロナ対策としての自身の肝煎り政策「社会的検査」を自画自賛。「社会的検査を受けた施設は検査陽性者が少なく、社会的検査を受けてないところは検査陽性者が多い、社会的検査を受ければ受けるほど、陽性者は減る」と猛アピールしていました。
マスメディアを集めた記者会見で、こう言っているわけですから、自身の政策がいかに良い結果につながっているかアピールし、それを報道してもらいたいということでしょう。
でも検査は治療ではありません。検査すればするほど陽性者が減るってどういう理屈なのでしょう。会見では読売新聞の記者から「区長の言っている意味がよくわからない。何をアピールしたいのか教えてください」と言った趣旨の質問も飛んでいました。
1時間7分22秒まで早送りすると読売新聞記者と区長のやりとりになります↓
ここまでは昨日のブログに関連した話ですが、他にも区長の会見内容で気になった点があります。
その中の一つが「感染していながら無症状の高齢者が新型コロナウイルス感染症を広げている」との話。これも記者会見でメディアの皆さんを前に区長が話しているわけですから報道して欲しいという意図でしょう。何やら「すごいことを発見した」と言わんばかりの様子で区長が語っています(記者会見の動画17分30秒ぐらいのところから)。
区長は会見で以下内容について言及しています。
・社会的検査の中で、新型コロナ陽性となった高齢者のうち、ウイルス量が多いに関わらず無症状の方がたくさんいた。
・無症状の感染者といえば若くて元気な人、本人は症状がなく、そういう若者が高齢者に感染させるというイメージだったがそうではなかった。
・高齢者施設で自力歩行がようやくできる、誰かの支えを得て(ようやく歩ける)という方の中に症状がなく、ウイルス量が多い方がいるという方がわかった。
・専門家からは「社会的検査の目的はこうしたスーパースプレッダーをいち早く把握して対応することだ」とコメントをもらった。
区長はこれらのことを興奮した様子で語っていましたが、先ずこれは高齢者施設という非常に限定された検査対象での話、そしてそこで陽性となった78人という少人数の事例から語っている話。よって、これを「高齢者全般」にあてはまる普遍的な話と捉えて良いのかどうかは、もう少し慎重に検討すべきです。
次に、区長の話を額面通りに受け止めるにしてもそれは「若者だけではなく、高齢者の中にも感染して無症状の方がいる」という話であって、高齢であることが重症化リスクの一つであることには変わりません。よって記者会見で殊更「高齢者の中にも感染して無症状の方がいる」と語ることで何を伝えたいのかもよく分かりません。
そして、区長が好んで使う「スーパースプレッダー」という言葉もやめたほうがいいのでは。聞いた人が「無症状でウイルスをばらまいている感染拡大の張本人」「モンスターのような存在」という印象を持ってしまう言葉ではないでしょうか。今回の社会的検査で陽性となった人の中にそういう人がいるという思い込みにつながってしまいますし、いたずらに人々の恐怖を煽る言葉だと感じます。
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