AEDで命を救ったり後遺症を減らしたりできる。世田谷区の施設では過去、対応が適切だったか疑問の例も。
世田谷区議会議員、桃野芳文です。
AED(Automated External Defibrillator=自動体外式除細動器)。一度は目にしたことがあるという方が多いのではないでしょうか。
AEDについて、今朝の朝日新聞にこんな記事が掲載されていました。
【AED使えば、後遺症減 現場で心拍戻らなくても 国循調査】(朝日新聞)
「国立循環器病研究センターの研究結果によると、倒れた人にAEDで心肺蘇生を試みた場合、救急隊が到着するまでに心拍が再開しなかったとしても、その後の脳障害による後遺症を減らせる可能性があることがわかった。自立して生活できるようになる割合がAEDを使わなかった場合に比べて1.5倍だった」との記事。
桃野は、防災訓練などで、これまで何度となく使い方を教えていただいたり、実際に訓練として利用したりしてきました。
倒れている人をみたら、肩を叩きながら呼びかけるなどして意識の有無を確認、胸の膨らみをみて呼吸の有無を確認、確認できなければ、このように電極付きのパッドを胸につけて、AEDを作動させます。
AEDは、心室細動と呼ばれる不整脈(心臓のけいれん)によって機能不全となっている心臓に電気ショックを与え、その機能を取り戻させる機器。正しい手順さえ踏めば、AEDが心電図を自動解析し、作動させる必要があるかも音声で指示してくれます。つまり、こちらが作動させようとしても、その必要がなければ作動しませんので、先ずは落ち着いて使い方通りに手順を踏めるようにしておくことが大切です。
ところがこんなことも。
【女性にAED ためらわないで】(2019.5.31 NHK未来スイッチ)
・倒れた人が女性だったことを理由にAEDが使われないことがある
・京都大学などの研究グループの調査結果によると、倒れた人が女性だと、男性よりもAEDが使われにくい。
・全国の学校の構内で心停止となった子ども232人について、救急隊が到着する前にAEDのパッドが装着されたかどうか調査。
・小学生と中学生では男女に有意な差は無し、高校生になると大きな男女差が出ていた。(男子83.2%、女子55.6%)
桃野はこれまでAEDの講習で教えて頂いたことがありますが、AEDを使うために女性の肌を露出されたとして、それが罪に問われることはありません。又、もしも心臓マッサージで力が入りすぎて、何らかの怪我を負わせてしまったとしても、それが故意でない限りは罪に問われることも責任を問われることもありません。
もし倒れている人をみたら、そういった意味でも落ち着いてかつ正しい手順を踏みながら躊躇なくAEDを使っていただきたいと思います。ちなみに上記記事には、パッド装着後、体の上に服をかぶせるなど女性に配慮したAED使用法が紹介されていて参考になります。
以下は、もう8年前になりますが、世田谷区の施設で倒れた方がいた際、AEDが使用されなかったことに関する桃野の一般質問。この方は残念ながら命を落とされました。
■世田谷区議会本会議一般質問(平成24年11月28日)の会議録より一部抜粋し引用
*桃野(質問)
次に、鎌田区民センターでの職員の救急対応について伺います。
今月四日、鎌田区民センターにて利用者が倒れ、死亡するという出来事がありました。その経緯をまとめた書類によると、十三時五十分、区民センターで囲碁を楽しんでいた男性のぐあいが悪くなり、囲碁仲間が職員に連絡。その後、職員が一一九番。十三時五十六分、救急車が到着。その後、搬送先の病院にて男性の死亡が確認されたとしています。
対応したのは、区から委託を受けていた世田谷サービス公社の職員ということも報告されています。私は、本件について、区としての検証が不十分と考え、事実確認を行いました。そこで浮かび上がったのは、利用者の命を救うための適切な措置がとられなかったという事実です。職員が一一九番をしてから救急車が到着するまでの六分間、この空白の六分間について質問します。
もしも人が倒れている場面に遭遇したら、医師や看護師等でなくとも適切に対応できるよう備えるため、消防署などが行う救命講習を受講するという方法があります。この救命講習は現在広く普及しており、受講者は年間百万人規模に上ります。本件に対応した職員も含め、世田谷サービス公社では全ての職員がこの救命講習を受講済みだそうです。当然この講習は、本件の対応に生かされるべきでした。
救命講習では、倒れている人の意識を確認する、ふだんどおりの呼吸があるか確認する、意識がなく、ふだんどおりの呼吸がなければ心停止と判断し、直ちに心肺蘇生を行うとしています。心肺蘇生には当然AEDの使用も含まれます。心停止後、できるだけ早くAEDを使った除細動を行うことで救命率は高くなります。AEDを使用することで救える命があるのです。
しかし、本件では、残念ながらそのような対応はされませんでした。職員は、倒れている男性の意識がないことは確認したそうです。しかし、男性が軽くせき込むような動作をしたと見てとり、ふだんどおりの呼吸があるかを確認せず、さらに、AEDを使用せず、つまり六分間、何も救命措置を行わないまま、救急車の到着を待ち続けました。救命講習は生かされなかったのです。
しかも、本件が起きたのは十一月四日ですが、偶然にも、この職員は十月二十六日に救命講習を受けていました。本来であれば、直前に講習を受けたことを奇貨とし、適切に事に当たれたはずです。区民センターの業務について委託の仕様を定めた書類を見ると、疾病人等が発生した場合には適切な措置を講じると定めています。本件では適切な措置が講じられたのか、区の見解を問います。
◎田中 砧総合支所長(答弁)
十一月四日、鎌田区民センターで囲碁を楽しんでいらっしゃいました利用者の方のぐあいが悪くなり、救急車で病院に運ばれましたが、大動脈解離でお亡くなりになられました。改めて、お亡くなりになられた方のご冥福をお祈り申し上げます。
六分間のお話がございましたが、委員会報告並びに所管課長への聞き取り調査の際に所管課長からご説明させていただきましたように、十三時五十分に囲碁仲間の方からご連絡があり、一階の受付にいた受託事業者の職員が消防署へ救急車の要請をするとともに、三階の大広間に駆けつけ、十三時五十二分にご本人に声かけをしましたが、応答はなかったものの、軽くせき込む動作を確認し、受付に対してAEDを持ってくるよう居合わせた利用者の方へ連絡をお願いし、ご本人に声をかけ続けたということでございます。
十三時五十三分にご家族へ連絡がとれ、AEDを三階大広間へ持ち込もうとした段階で、十三時五十六分に救急隊が到着し、処置が開始されたとの報告を受けてございます。受託事業者として、関係機関などに連絡するなど適切な措置は講じられたと受けとめてございます。
■引用以上
世田谷区の区立小中学校では全校で、又、区の公共施設の多くにAEDが設置されています。もしも誰かが倒れ場合、周囲の方は躊躇なく活用をお願いします。
世田谷区の施設におけるAED設置場所の一覧はこちらです。
コメントを残す