「学校に行かなくてもいいんだよ」という「優しい排除」。いじめ被害者が教室、そして学校から離脱していく一方で、加害者は学校に通い続ける。
世田谷区議会議員、桃野芳文です。
本日のブログは先日の桃野の区議会一般質問より。
【1)世田谷区立小中学校は子ども達が安心、安全に過ごせる場所と言えるか】ついてご報告です。
近年、新学年や新学期の時期になると多くの個人、団体が、いじめ被害者などに向けて「苦しければ無理をして学校に行かなくてもいいんだよ」とのメッセージを発信するようになりました。
かつてのように「やられたらやり返せ」や「頑張って学校にはいくべきだ」という論はほとんど聞かれません。世田谷区も(その被害者児童・生徒が通う)学校の外に、様々な形で子どもの居場所を準備してきました。
例えば、世田谷区には、いじめ等の被害者に限らずですが不登校や不登校傾向のある生徒を対象にした【不登校特例校分教室「ねいろ」】もあります。
桃野も、学校に行きたくない子どもに対して「学校に行かなくても良い、他の居場所で過ごしたら良い」と語りかけるのは間違いだとは思いません。特に緊急的な避難として学校に行かないというのは、とても大切な選択肢でしょう。
しかしそれはいじめ、暴力行為の被害者たる子どもにとって、本来望む形でしょうか。いじめ被害者が教室、そして学校から離脱していく一方で、加害者は学校に通い続ける。こうしたことを名古屋大学の内田良教授は「やさしい排除」と表現しています。
今回、桃野の質問に対して区側の答弁では「教育委員会が把握している、いじめの認知件数は、平成29年度は小学校125件・中学校79件だったものが、令和3年度は小学校197件・中学校102件と増加傾向」とのことでした。
過去のいじめ事件、例えば2011年の大津市中学生いじめ自殺事件、2021年の旭川市中学生いじめ凍死事件でも、学校は当初いじめについて認識していないと発表していました。いじめは構造的に表に出てきにくいものです。学校の教職員は「今、顕在化していないいじめも起きているかもしれない」「今は起きていないが、いじめはどこででも起こりうるもの」という意識を常に持ち、その上で、いじめが起きた際の対応を定めておかなければなりません。
教育基本法では「性行不良であって他の児童生徒の教育の妨げがあると認められる児童生徒があるときは、教育委員会が、その保護者に対して,児童生徒の出席停止を命ずることができる」としています。
ではこれまで、世田谷区で暴力やいじめなどによる出席停止が何件あるでしょう。区側に問うたところ、答弁では「ここ数年間の把握できる範囲において、出席停止を命じたことはない」とのことでした。
桃野が調べると、世田谷区では「世田谷区立学校管理運営規則」で出席停止について定めていますが、この規則は教育基本法を引用する程度の内容に留まっており、実際に出席停止を判断する際に、学校現場の責任者である校長が果たすべき役割、校長はどういう手順を踏むかなどの定めが全くありません。
出席停止は被害者を守るための強力な手段である一方、加害者の権利を制限するものであり、加害者側からの強い抗議も想定されます。出席停止の妥当性を巡り訴訟が提起される可能性もあるでしょう。
そうした想定をしつつも、被害者を守るために必要であれば躊躇なく、出席停止の判断が下されなければなりません。その為には、係る手順や、加害者の「教育を受ける権利」をどのように保障するかなどを明確に定めておくべきです。
今回の区側の答弁では、桃野の課題提起について明確な答弁が示されました。以下、教育総務部長の答弁です。
これまで、教育委員会では、出席停止の規則については定めてきましたが、具体的な手順については、示しておりませんでした。今後、教育委員会では、学校が問題を抱えた際に、どのように手続きを進めていくのか、児童・生徒にどのような個別の指導計画を行うのかなど、具体的な手順を、専門家や学校現場の意見も聴取しながら、定めてまいります。
世田谷区教育委員会には迅速に進めてもらいたいと思います。
では教師と児童生徒の関係においてはどうでしょうか。例えば、教師の体罰、暴言等で児童生徒が不登校になった場合の対応はどうすべきか。
東京都は教職員の懲戒処分について、以下定めています。
・極めて悪質又は危険な体罰を繰り返した場合で、児童・生徒の苦痛の程度が重いとき(欠席・不登校等)、は免職。
・暴言又は威嚇を行った場合で、児童・生徒の苦痛の程度が重いとき(欠席・不登校等)、は停職・減給・戒告としています。
一方、教職員の非違行為(体罰、暴言など含む)から処分までには1年以上を要するケースもあります。つまり、教職員の暴力や暴言で児童生徒が不登校になり、その教職員がいる限りは安心して学校に行けないという子どもは、長期間、不利益を甘受しなければいけないという事態が起こり得ます。こうしたケースにおいても子ども達が安心、安全に過ごせる学校であるための仕組みづくりが必要です。
桃野が問うと、教育総務部長は以下の答弁。
教職員の言動により、児童・生徒が不利益を被ることは、あってはならない。これまで教育委員会では、児童・生徒の状況と保護者の要望なども考慮し、複数指導体制や担当教員の変更、別室への登校、オンラインを活用した学習など、様々な対応を実施するよう学校に指導をしている。
教職員は、児童・生徒の成長に大きな影響を与えることから、その職責を十分に理解し、倫理観や規範意識を高め、服務の厳正に努めるよう、各学校では、服務事故防止研修、服務事故防止月間など様々な機会を通して、服務事故の根絶に向けて、引き続き取り組む。
残念ながら、この部分については、桃野の課題提起に正面から答えるものではありませんでした。今の取り組みを挙げた後に、服務事故の根絶に努めると言っているのですが、今の取り組みはいずれも前述の「優しい排除」に似たようなものです。
複数指導体制や担当教員の変更→別のクラスに言って授業を受けるなど
別室登校、オンライン学習→被害者たる子どもの側が別の場所で授業を受ける
もちろん、非違行為の程度によってではありますが、処分が検討されている間の教師の処遇については、新たな制度を作るべきだと考えています。
【1)世田谷区立小中学校は子ども達が安心、安全に過ごせる場所と言えるか】の質問の様子は、以下の動画でご覧ください。約5分の動画です。
桃野の一般質問の全体はこちらの動画でご覧ください。
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