差別や偏見を無くし、多様な性が尊重される社会をつくるために。世田谷区議会は新たな議論を進めなければなりません。
世田谷区議会議員、桃野よしふみです。
昨日のブログに続いて、世田谷区議会本会議より。
昨日の本会議では、都市整備委員会で「継続審査」となった世田谷区営住宅管理条例等、3条例の改正について、「継続審査」に対する賛否の採決も行われました。
我々の会派(無所属・世田谷行革110番)は「継続審査」とすることに反対しましたが、採決の結果、我々の会派を除く、全ての会派が「継続」に賛成で、継続審査となりました。
本会議で桃野は「継続審査とすることに反対」の意見を述べましたので、以下に要約してご報告します。
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我が会派は「性的少数者に対する差別や偏見を無くし、多様な性が尊重される社会をつくるべき」との考えです。区は、区営住宅等の入居資格に関わる課題についても、急ぎ、取り組むべきである、と考えます。
一方、本改正条例については、区は、改正理由の中で「同性カップルの住まい確保の支援策」を挙げてはいますが、実際には「区長が認めるときは、同性者(つまり男同士や女同士)が、区営住宅等で、同居して共同生活を送ることができる」との内容であり、これは「いわゆるシェアハウスなども含めた同性者による共同生活を可能にする条例」としか読み取ることができません。
改正条例には他に、入居資格を制限する記載として「規則で定めるものに限る」とありますが、未だ規則の中身が示されていないことについて私が、2月24日の本会議一般質問で取り上げると、都市整備部長が、規則で定める事項として「同性パートナーの審査のため申述書を提出すること」を挙げ、申述書では「申込者と同居者の双方がパートナーと認め合っていること、当該同性者の双方が継続的に共同生活を営んでいることを確認する」旨を、答弁しています。
人によって受け止め方がマチマチな、つまり定義がされていない言葉で人の権利を規定することはできません。
本件でいえば「同性パートナー」とは何を意味するのか。「同性者の継続的な共同生活」とはどういう状態か。先ずこれを定めなければならないでしょう。
更にいえば、規則とは「区長が権限に属する事務」について定めるものですから、本規則で定められる事項が、実質的に「権利の制限」を定めるものならば、それは明らかに規則としての役割を超えています。
本改正条例を、区が提案理由で言うように「同性カップルの住まい確保の支援策」たらしめるためには、必要な文言を定義し、条例に盛り込むことが欠かせません。先行する渋谷区の「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」では明確に「性的少数者の人権の尊重」などの文言を盛り込んでいます。
都市整備委員会では、「区民への周知不足」「性的少数者への理解が足りないなど多くの課題が残されている」などの意見も出され、引き続きの議論が必要、と本改正条例を「継続審査とする」との結論となりました。
しかし、この改正条例の大きな問題点は区民への周知不足にあるわけではありません。そして、性的少数者への理解、区民への啓発については、区はこれまでも行ってきましたし、引き続き行われるべきことでもあります。これらを本改正条例の問題点と結びつけることは適当ではないと考えます。
ここに、皆さんにご紹介したい作文があります。
法務省と全国人権擁護委員連合会が行った平成28年度全国中学生人権作文コンテスト、で入賞した都内区立中学校3年生のある生徒の作品です。
題名は「私を生きる」です。抜粋して引用します。(※原文リンクはこちら)
いつしか自分の心の中に男性のようにも女性のようにもありたいという二つの思いが存在するようになった。そのことを自覚したとき、目の前の霧がぱっと晴れたような気持ちになったことを鮮明に記憶している。
それと同時に、「どうしよう」という不安と戸惑いの気持ちが芽生えた。「自分は おかしい人間なのだろうか」という問いが頭の中をぐるぐると回った。このことを打ち明けてしまったら、両親、祖父母、親戚、親しい友だち、全ての人が私と今までのように接してくれなくなるかもしれない、と一瞬恐ろしくなったのだ。
私がこのような不安と戸惑いの気持ちを抱いたのは、人間は誰でも自分とは違うものを否定したくなる性質を持っていると私自身が考えているからだ。そのような性質は性的少数者だけではなく、有色人種、障がい者、在日外国人などへの差別意識にも通じていると思う。
昨年十一月には、渋谷区で同性カップルに同性パートナーシップ証明書を発行するという制度が作られた。これにより同性愛者だけでなく様々な性的少数者に対する社会の理解が深まっていくだろう。
しかし、差別意識というものを完全になくすのは実際にはかなり難しいことだと思う。かく言う私も「あなたは今、差別意識を全く持っていないのか。」と問われるとすぐに「はい。」とは答えられない。
だがこの多様な世界を生きてゆく中で私たちには、自分の思う「普通」が世間の「常識」なのだという考えを捨て、新たな視点を持つことのできる柔軟な 姿勢が求められるのではないだろうか。そして人を性別や見た目で判断せず、その人の持つ「その人らしさ」を一つの「個性」として、受け入れることのできる世の中になってほしいと思う。
どんな個性を持っていたとしても、その人は「かけがえのない人」に変わりはないのだから。
引用は以上です。
性的少数者への制度的差別については、区は一刻も早い解消に努めるべきです。よって、本改正条例は継続審査で、いたずらに時間をかけるのではなく、区議会は新たな改正条例もしくは新たな条例制定へと議論を進めなければなりません。それが性的少数者の権利擁護を急ぎ進める道でもあります。
(要約ここまで)
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議場で意見を述べる様子は世田谷区議会のホームページより動画でご覧頂けます。
(1時間58分30秒まで早送りすると桃野の発言部分となります)
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